Moi! モスラです。
フィンランドの春はもうすぐそこ。最近、ステイ先のお庭でよく出会うのが、ふさふさの尻尾が愛らしい Orava(オラヴァ:リス) です。
僕が滞在している家の周りは、トウヒ(Kuusi)やマツ(Mänty)、白樺(Koivu)が主体の森に囲まれています。窓の外を眺めていると、彼らがひょっこり現れては木々の間を跳ね回る。ここはまさに「オラヴァのゆりかご」と呼ぶにふさわしい場所です。

■ 北海道の「エゾリス」との不思議な一致
お庭でリスを見かけるたびに、「どこかで見たことがあるな」と懐かしい気持ちになっていました。
そう、日本の北海道に住む「エゾリス」にそっくりなのです。気になって調べてみると、驚きの事実がわかりました。
北欧のリスも、日本のエゾリスも、学名はどちらも Sciurus vulgaris(キタリス)。日本のエゾリスは、このキタリスの「亜種(Subspecies)」にあたります。
- 学名: Sciurus vulgaris
- エゾリスの学名: Sciurus vulgaris orientis
1万キロ以上離れたフィンランドと北海道で、同じ血統のリスたちがそれぞれの森を見守っている。
氷河期の記憶で繋がる植生と同じように、動物たちのルーツもまた、大きな物語の中で繋がっているのだと感じます。
■ 専門的な裏付け:国立環境研究所のデータから
国立環境研究所の「侵入生物データベース」を紐解くと、このキタリス(Sciurus vulgaris)はイベリア半島からイギリス、そして東はサハリンや北海道まで、ユーラシア大陸の広大な森林地帯に広く分布していることがわかります。
日本では、北海道に自然分布するエゾリス以外の亜種は、生態系への影響を考慮して輸入や飼育が制限されています。フィンランドで当たり前に目にするこのリスも、海を越えた日本では非常に慎重に扱われる存在。改めて、彼らが地域の生態系を形作る重要なピースであることを実感しました。
■ 図鑑から紐解く、森の知恵者たちの素顔
現地の図鑑を手に取って、彼らの生態を読み解いてみました(フィンランド語の勉強も兼ねて!)。そこには、可愛らしい見た目だけではない、たくましい生存戦略がありました。
- 住まいの再利用: 自分で枝の巣を作るだけでなく、Palokärki(クマゲラ) や Harakka(カササギ) の古巣、ときには人間が設置した Linnunpönttö(鳥の巣箱) までも器用に使いこなします。
- 森のグルメと「非常食」: 主食は Kuusi(トウヒ) の種子。それが足りない時は Mänty(マツ) を食べます。さらに驚いたのは、冬の備えに Sieni(キノコ) を採取し、木に挟んだり吊るしたりして「干しキノコ(sienivarasto)」として貯蔵すること。
- 意外な一面: 針葉樹の種子やナッツだけでなく、時には昆虫や鳥の卵、雛まで食べるという雑食性も持っています。厳しい北欧の自然を生き抜くための、現実的な強さも持ち合わせているのです。
写真はリスが食べた後の松ぼっくりです。日本ではエビフライなんて言われて親しまれていますが、こちらのエビフライは車海老サイズです。

■ 春の訪れとベビーブーム
図鑑によると、南フィンランドでは早いところで4月に最初の赤ちゃんが生まれるそう。今、お庭を忙しそうに走り回っているのは、新しい命を迎える準備なのかもしれません。もうすぐ、親リスの後を追う小さな子リス(oravan poikanen)に出会える季節がやってきます。
■ 今回学んだフィンランド語とフレーズ
ブログや日々の観察で使える、リスにまつわる言葉を整理しました。
【単語集】
- Orava(オラヴァ): リス
- Kuusi(クーシ): トウヒ。フィンランドでは「6」と同じ単語です。
- Mänty(マンテュ): マツ。
- Sieni(シエニ): キノコ。
- Käpy(カピュ): 松笠(コーン)。リスの食べ跡はエビフライに似ています。
- Laji(ライ): 種。
- Alalaji(アラライ): 亜種。
- Pesä(ペサ): 巣。
【使えるフレーズ】
- Orava on pihalla. (オラヴァ・オン・ピハッラ) 「リスがお庭にいます。」
- Metsä on oravan kehto. (メッツァ・オン・オラヴァン・ケフト) 「森はリスのゆりかごです。」
- Katso, orava! (カツォ、オラヴァ!) 「見て、リスだよ!」
- Orava rakentaa pesän. (オラヴァ・ラケンター・ペサン) 「リスが巣を作っています。」
- Orava syö sieniä. (オラヴァ・スョー・シエニア) 「リスはキノコを食べます。」
■ 参考文献・使用した図鑑
今回の記事を書くにあたって、フィンランドの哺乳類について詳しく解説されているこちらの図鑑を参考にしました。
- タイトル: Nisäkkäät Suomen luonnossa (フィンランドの自然界の哺乳類)
- 著者: Juha Valste
- 出版社: Otava
- ISBN: 978-951-1-34949-5
■ まとめ
足元の苔から、窓の外のリスまで。フィンランドの森は、調べれば調べるほど日本の自然との共通点と、この土地ならではの個性が入り混じっていて飽きることがありません。
「ハコメッツァ(箱の森)」の構想を練る上でも、彼らが自分たちで家(箱)を作り、あるいは見つけて、森(メッツァ)と共生する姿はとても大きなヒントになりそうです。

